『レモンと殺人鬼』張り巡らされた伏線と驚きの結末にあなたは言葉を失う

本の紹介

人それぞれに考え方や行動のとり方は違ってきます。例えば目の前で虐待を受け泣いている子供を守るために、真っ先に子供を抱きしめ身代わりに暴力を受ける人や、手に持っていたナイフで暴力を振るう人に制裁を与える人。どちらにせよ子供を守るための行動ですが、人それぞれに取る行動は違ってきます。

「レモンと殺人鬼」は人間の心理を色々な角度から描いたミステリー小説です。物語の中に張り巡らされた伏線は、結末を知った時に声も出ない程に驚かされます。そして、もう一度読み返したくなる小説です。

内容説明(裏表紙より)

十年前、洋食店を営んでいた父親や通り魔に殺されて以来、

母親も失踪、それぞれ別の親族に引き取られ、不遇をかこつ日々を送っていた小林姉妹。

しかし、妹の妃奈が遺体で発見されたことから、運命の輪は再び回り出す。

被害者であるはずの妃奈に、生命保険金殺人を行っていたのではないかという

疑惑がかけられるなか、妹の潔白を信じる姉の美桜は、

その疑いを晴らすべく行動を開始する。

主な登場人物

小林 美咲(こばやし みお)

姉妹の姉で本作の主人公。高校を卒業後、登録制の派遣社員として大学の事務で働く。

小林 妃奈(こばやし ひな)

美咲の妹。保険外交員として働いていたが、山中で遺体として発見される。

小林 恭司(こばやし きょうじ)

姉妹の父親。飲食店を営み繁盛していたが、十年前に通り魔によって殺害される。

小林 寛子(こばやし ひろこ)

姉妹の母親。旦那の恭司が亡くなった後、突然と姿を消し行方が分かっていない。

銅森 一星(どうもり いっせい)

飲食店を興じた若き経営者。妹の妃奈と過去に交際しており、交際当時に保険金詐欺にかかりそうになっていた事をテレビのインタビューで答える。

川喜田 弘(かわきた ひろし)

妹の妃奈が殺害される前に交際していた男性。事故により死亡しているが、妃奈の名義で死亡保険が掛けられていた。

渚 丈太郎(なぎさ じょうたろう)

姉の美咲が働く大学の学生。妹の妃奈にかかっている保険金詐欺の疑いを晴らす為に美咲と共に真相を追求する。

金田 拓也(かねだ たくや)

銅森の幼馴染で、銅森を守るためなら脅迫でもなんでもする人間。

こんな人に読んでほしい

若くして家族を失ったことがある人

自分は不運な人生を送っていると思っている人

守りたい相手がいる人

注目ポイント

妹・妃奈の死

物語は妃奈が遺体で発見された事からスタートします。そして、なぜ殺されたのか、誰の手によって殺されたのかは、結末まで読み進めるまで分かりません。しかし、それを知った瞬間は点と点が結ばれハッと息を飲むほどに驚かされます。

姉の美桜からみていた妃奈の人物像は本当の妃奈だったのか?たまに愚痴を言い合いながらも、姉妹で懸命に前を向いて進もうと言っていた妹の言葉は本心から出た言葉なのか?血がつながった姉妹だからこそ理解していたつもりだった姉の思い違いとは?

妃奈の死から分かってくる、最後のどんでん返しは誰しもが驚く内容だと思います。

心理描写

この小説には、理解しがたい感情を抱く人が複数人出てきます。それぞれが自分を愛し、他者を愛し、その表現の一つとしてどうにも理解しがたい感情表現をしています。憧れを抱く人物像に近づきたくて道を誤ってしまう者や、人を愛しすぎた故に周りが見えなくなってしまった者など、それぞれの心理描写がとても丁寧で、読むにつれて物語に引き込まれていきます。

張り巡らされた伏線

この小説の素晴らしいところは隠された伏線が多いという事もあるのですが、それぞれの伏線に違和感がないという点です。伏線が多くなればなるほど、無理やり感がでてしまったり、取って付けたような内容の浅い物語になってしまいそうですが、どの伏線もちゃんと回収されているので一つ一つに驚かされます。

小説の最後にある解説ページにて、ライターの瀧井朝世さんがこのように書かれています。「物語の展開のためにこういう人物を作った」というよりも、「こういう人物がいた場合、どういうことが起こるのか」とうい視点から話が構築されている、だから行動原理に整合性が取れているのだ。と書かれています。だから、たくさんの伏線も整合性があり違和感なく驚かされてしまうのだと感じます。

感想

とても読み応えのある1冊でした。数多くの伏線と人間心理は、読んでいくにつれて物語の世界観に引き込まれていきます。本当に驚いたのは、一番最初から伏線の罠に引っかかっていたと気づいた時です。そのことを知ったのは最後の最後でしたが、くわがきあゆさんの巧妙な物語の展開作りには脱帽です。二度、三度と読み返すことで、まだまだ気づけていない伏線にも出会える気がして、読み返すのが楽しみになる小説でした。

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