『一人称単数』人生にあるいくつかの分岐点。そして私は今ここにいる。

本の紹介

6年ぶりに出された、8作からなる短編小説。それぞれの短編小説には関連性はありません。独立した8作で構成されています。

短編小説なので読みやすく、短編ごとの関連性もないことから、時間をかけて読み進めても楽しめる1冊になっています。

あらすじをまとめていますが、ネタバレにもなるので8篇の中から、3篇ほど抜粋して取り上げています。少しでも皆様に、謎に満ちた村上春樹ワールドを楽しいんで頂ければと思っています。

私は、今回初めて村上春樹さんの小説を読みました。謎多き話しが続き、これが村上春樹ワールド?っといった感じですが、初めて読んだのでワールド?で終わったままです(笑)

内容説明(裏表紙より)

ビートルズのLPを抱えて高校の廊下を歩いていた少女。

同じバイト先だった女性から送られてきた歌集の、今も記憶にあるいくつかの短歌。

鄙びた温泉宿で背中を流してくれた、年老いた猿の告白。

スーツを身に纏いネクタイを結んだ姿を鏡に映したときの違和感。

そこで何が起こり何が起こらなかったのか。

驚きと謎を秘めた8篇。

こんな人に読んでほしい

短編小説が好きな方

村上春樹さんの作品を読んだことがない方

独特な言い回しや謎に満ちた世界観の小説が好きな方

あらすじ(3篇を紹介)

石のまくらに

大学生の頃の話。同じバイト先の女性と一夜を過ごす。その女性の名前もどんな人なのかもよくわからない。知っている事といえば、その女性は短歌を歌い、自費で短歌集を作っているという事。

共に迎えた翌朝、その女性は短歌集を送るからと言うので、住所と名前を書いたメモを渡した。ちゃんと翌週には短歌集が届き、そこに綴られた短歌には少し不気味に思える短歌がいくつかあり、後残りが悪い終わりだった。

その女性の名前もどんな人なのかもわからない。今どこにいるのか、生きているのか死んでいるのかもわからない。

今後、2度と会う事はない女性から送られてきた短歌の話。

クリーム

18歳の時に経験した、とても奇妙な話し。

昔、ピアノを一緒に習っていた少女から演奏会の案内状が届いた。その少女は演奏が上手だった。一緒に演奏したときは、よく怒られていたものだ。音を間違えたり、テンポを間違えたりすると、横から舌打ちが聞こえていた事を思い出す。その音が嫌で、僕はピアノを弾かなくなった。

それから月日が経ち、いきなり招待所が届くのだが、とくに連絡を取り合っていたわけでもないので、なぜ送られてきたのか理由が分からなかった。コンサートを開く事が出来たことを自慢したいのか、さらに腕が上達したことを見せつけたいのかと思ったが、興味があったので招待を受けることにした。

少しだけ正装をし、会場に行くまでの途中にある花屋で花束を買った。バスに揺られて会場を目指すが、バスの中では不思議そうに乗客から見られ、恥ずかしい思いをする。

閑静な住宅街を抜け、コンサート会場に到着するが、そこで今からコンサートが開かれる雰囲気ではない。開園15分前にも関わらず、門さは施錠され案内もされることはなかった。日にちを間違えたのかと招待所を確認するが、間違えてはいない。どういうことなのか、、、

僕は諦めて、会場近くにある公園にあるベンチに座り、空を見上げながら少女がなぜ招待所を出したのか考えることにした。すると、持病の過呼吸に襲われて、倒れてしまう。少しして目が覚めて、我に返ったとき向かいにあるベンチに老人が座りこっちを見ていたことに気づく。

老人は「無数の中心を持ち、外周を持たない円」の話をする。僕はそんな円は存在しないと答えたが、老人は存在するのだと答える。そのことを考えていると、気づいたら老人は消えていた。

僕は持っていた花束をベンチに置き、帰宅することにした。

品川猿の告白

5年前に、群馬県にある温泉宿に行った時の話。

宿を探す頃には日も暮れていたので、泊まれる所が無く困り果てていた。探し回るなか、少し離れたところで夕食は付いてないが、朝食付きで泊まれる宿を見つけ安堵する。良く言えば古風があり田舎の雰囲気にあった宿だった。

他の宿泊客は見る限りではおらず、温泉に入っても貸し切りのようだった。そこで、会話のできる猿と出会う。その猿は「お背中をながしましょうか?」と話しかけてきた。僕は「お願いしようかな」と猿の申し出を受けたところから、僕と猿の会話が始まる。

その後、僕は会話のできる猿を部屋に招待した。猿はビールも飲めると言うので、瓶ビール2本を一緒に持ってきてくれと頼んだ。部屋の整理が終わった頃に、猿は瓶ビールと一緒につまみも用意して部屋にやってきた。

話を聞くと、猿は以前に品川に住んでいたので、ここの宿では品川猿と呼ばれている事好きになった女性の名前を盗む事とが出来る能力があると話した。

翌朝になり宿を出る際に、受付で瓶ビール2本分の追加料金を払いたいことを申し出ると、そんな注文は聞いていないから追加料金は発生したしてないと言われた。おかしく思った僕は、品川猿のことを話したが、そんな猿のことはわからないと言われ、謎のままに終わる。

感想

これほどまでに説明が難しく、独特な小説は今まで読んだことはありませんでした。読み終わった後は、驚きと共に謎に満ちた世界に投げ出されたような感覚になりました。

それぞれの短編の中に、いろんな謎や疑問点があるのですが、関連性のない短編小説なので読み返しても解決されることはありません。すっきりとした気持ちで読み終えれるような小説ではなかったと思います。しかし、その謎の多さが村上春樹ワールドなのかと、読み終わった後になり感じることができました。

なぜなら、他の作品の読むことで、今感じている謎を解決できるのではないかと思っているからです。村上春樹さんが、昔に出版された小説を読むことで関連性を見つけることができ、胸に残ったモヤモヤした感覚が解決できるんじゃないかなと、少し期待してしまっています。

近いうちに、長編の小説も出版される内容の記事を見たので、チェックしておこうと思います。

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