『ヨモツイクサ』戦慄のバイオホラー。驚愕の真実と結末に震える。

本の紹介

「バイオホラー」ってなに?と気になったことがきっかけで手に取った小説です。

普通のホラー小説となにが違うのかと思いましたが、読んでみてすぐにその違いに気づかされました。

恐怖心を煽るようなホラー小説に加えて、生物の持つ未知なる可能性を不気味に描かれており、フィクションだと分かって読んでいるから平常心を保ちながら読み進める事ができました。

今回、ご紹介する小説「ヨモツイクサ」は、ラストに信じがたい驚愕の真実と、考えたくもないゾッとする結末に身震いしてしまう、私(けんた)のおススメする一冊です。

※ネタバレなしを心がけています。結末や考察は、読者の方ご自身で楽しんで頂きたいと思っておりますので、出来るだけネタバレしないように書いています。ご覧になられた方で、ご期待に沿えない場合があるかもしれませんが、ご理解いただけますと幸いです。

内容説明(帯より)

読書メーター読みたい本ランキング1位(単行本月間2023年3月3日~4月2日)

戦慄のバイオホラー。その森にはなにがいる。

「黄泉の森はアイヌの人々が怖れた禁域。侵入すればヨモツイクサの餌食になるよ」

「最近もリゾート開発を始めた会社の従業員たちが行方不明になり、現場には『何か』に蹂躙された痕跡だけ残されていました。警察はヒグマだと断定しましたが、あんな殺戮は考えられません」

「7年前にもあったんだ。禁域のそばの一家が行方不明になった神隠し事件が。残された女医は今でも家族を探し続けているよ」

「二つの事件はヨモツイクサの仕業なんでしょうか。これは噂ですが、作業員は死ぬ前に神秘的な蒼い光を見たそうです」

主な登場人物

佐原 茜(さはら あかね)

道央大学医学部付属病院の外科医局に勤める女医。7年前に家族が行方不明になっている。

姫野 由佳(ひめの ゆか)

佐原茜の5年下の後輩。茜に憧れを抱いており、よく茜の執刀する手術の助手をしている。

小此木 劉生(おこのぎ りゅうせい)

旭川東警察署の刑事課に所属する刑事。また、佐原茜の姉・椿の婚約者。

佐原 椿(さはら つばき)

佐原茜の姉。旭川市内で交番勤務をしていた警察官。7年前から行方不明になっている。

鍛冶 誠司(かじ せいじ)

猟友会の中では屈指の猟師で、熊退治を得意とする。彼の右に出る者はいない。

四ノ宮 学(しのみや まなぶ)

道央大学医学部法医学教室の教授。佐原茜とは同級生として親しい関係。

こんな人に読んでほしい

ホラー小説が好きな人・興味がある人

人間や生物の未知なる力に関心がある人

復讐心を抱いたことがある人

注目ポイント

黄泉の森

かつて昔に住んでいたアイヌの人々から語り継がれている噂話があり、現代になっても信じられていました。それは「黄泉の森には悪い神様が棲んでいる」という噂。

ある森には奥まで進むとお地蔵様が置いてあり、そのお地蔵さまが「人の世界と神様の世界の境界線」となっていました。その先に進むと黄泉の森へと続くことから、近隣の住民たちは足を踏み入れることは絶対にしないのです。

なぜなら噂だけではなく、7年前に黄泉の森の近くに住む一家の行方不明事件(神隠し事件)が起こっているから。

しかし、リゾート開発のために黄泉の森を切り崩すことが決まったことで、そこの作業員たちはお地蔵様の境界線を越え、黄泉の森へ足を踏み込んでしまったことから悲劇が繰り返されてしまう事に、、、

ヨモツイクサ

本作のことを語るうえで必要不可欠な存在。かつ紹介する上で必ずネタバレに繋がる存在。

手っ取り早く「ヨモツイクサは〇〇だ!」「ヨモツイクサと言う〇〇は、生き物に〇〇して、その後に〇〇させて、そして新しい〇〇を・・・・」なんて言えたら、とても楽なブログ作成で終わってるんだろうなと感じます。

しかし、冒頭で述べている通り結末や考察は読まれた読者の方に楽しんで頂く書き方のブログスタイルなので、出来る限りではネタバレさせません。

それでも「ヨモツイクサ」について触れるとすれば、「新しい世界・生まれ変わる為の進化、それらの可能性を不気味に表現したもの」と言えるのではないでしょうか。

あらゆる環境に順応してゆくために、適した遺伝子を取り込んでは失敗し、また新たな遺伝子を探す事を何度も繰り返し、その世界に合った進化を遂げる。

本作では、黄泉の森に棲む悪の神が、自分に適した環境と未来に繁栄してゆくために、悍ましく怖しい手段で動き出します。

そして、それは新たな世界へと広がろうとするのです。

復讐

「復讐」この言葉を胸に秘めている人が多く登場します。

黄泉の森に棲む神もその一つ。復讐することで語り継がれている噂を現実のものへと書き換えていくのです。

最愛の人を失った悲しみ。裏切った人への怒り。大切な我が子を奪われた絶望。

それらを復讐という感情に変化させ、生きる原動力としている人々。

しかし、誰も報われずに終わっていきます。

ホラー小説のようで、実はイヤミス小説でもあるように感じてしまうほどに、切なく悲しい物語でもあるのです。

感想

普段はあまりホラー小説を読まないのですが、そんな私でもドキドキ・ゾクゾクしながら面白く読めた小説でした。

前半はグロイ表現に慣れる事が出来ず、読むペースがゆっくりになりがちだったのですが、中盤以降から物語の展開にスピード感が増してきて、それと同時にグロさにも慣れてきたため、ほぼ一気読みしてしまいました。

結末では、予想していた事とは違う真実だったので驚きました。また、ホラーらしい怖い終わり方で締めくくられていたので、暑く感じ出す初夏の頃ですが、読み終わった後に体感温度が少し下がったように感じるほど寒気を感じました。

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