『バナナケーキの幸福』心から温まる物語。第二の人生で得たものとは。

本の紹介

今回は、『バナナケーキの幸福』をご紹介させて頂きます。表紙に描かれたバナナケーキのイラストが特徴的で、私はそのイラストに惹かれて購入しました。本作の内容を示唆するような温かみのあるイラストです。

山口恵以子さんが描く、心温まる感動作を是非ご覧いただければと思います。

内容紹介(裏表紙より)

穏やかでお菓子作りが上手な母・茜と、法律事務所に勤めるしっかりものの娘・七。

ある日、茜は夫から離婚を言い渡されてしまう。突然の事に傷つき、離婚後も落ち込む茜。

茜の生き甲斐を取り戻そうと、七と商店街の友人たちは手作りケーキの販売を持ちかける・・・

人生へのリベンジをかけ、茜と七の洋菓子店が開店する!

奮闘する母と娘の絆をスイーツと共に温かく描く感動作。

主な登場人物

栗田 茜

お菓子作りが上手で、茜の作るパウンドケーキは近所で美味しいと評判だった。医者をしている夫から離婚を言い渡され傷つく中、娘の提案で今まで趣味で作っていたパウンドケーキを販売するようになる。

栗田 七

茜の娘。法律事務所で働くしっかり者。離婚後に傷つく茜の生き甲斐を見つけるため、茜が上手なパウンドケーキの販売を提案する。

栗田 敏彦

循環器内科の医師。15年前に急死した兄の跡を継ぎ、実家の経営する病院の院長に就任した。

六角 丈太郎

時代小説の作家。食べ歩きが趣味で食に関するエッセイが人気。

西脇 健人

七の幼馴染。スーパー『ウエスト』社長の息子。大手出版社の『時代社』で勤めている。

こんな人に読んでほしい

セカンドライフについて考えている人

お菓子作りが好きな人

生き甲斐を探している人

注目ポイント

作家・六角丈太郎との出会い

茜が作るパウンドケーキが注目を浴びるきっかけとなったのが、六角丈太郎との出会いだった。

茜と七は、自作したパウンドケーキを喫茶店『ルナール』に卸していた。ある日、作家の六角は、ルナールで食べたパウンドケーキの美味しさに感動し、エッセイで紹介したことで茜と七が作るパウンドケーキは注目を浴びることになる。その後、茜と七が洋菓子店を営むようになっても、そこに自ら足を運び手土産でパウンドケーキを買ってくれるのだった。

とても紳士的でオシャレな六角に出会えた事が、茜と七にとって大きなターニングポイントになる。

恥をかく勇気

夫・敏彦の家系は先祖代々医者として活躍しており、その妻になる人たちも昔から医者だった。しかし、敏彦と結婚した茜は医者ではないため、敏彦の母親からは煙たがられ壁を作られていた。茜が離婚を言い渡されることとなるきっかけは、敏彦が女医と再婚をするためだった。結婚した当初から茜という存在は、先祖代々医者で固めた家系に恥を塗る存在だった。

また、敏彦が院長を務める病院で医療ミスが発覚し、多くの人が手術後3か月以内に亡くなっていることが報道される。その手術を執刀した医者の技術不足が原因であることは明らかだったが、その医者は敏彦が卒業した大学の後輩で、数多くの執刀例もあることから、敏彦は医療ミスのことを認めず、現実と直視することはなかった。

しかし、報道が大きくなるにつれて医療ミスの事実が世に知れ渡るようになったことで、病院の経営も傾き、敏彦は自ら命を絶ってしまう。

それを聞いた茜は、「恥をかく勇気」があればこんな事にはなっていなかったと言った。

人と人の出会い・ご縁

アカナナ洋菓子店を営むにあたって、多くの人と出会い、助けられ、少しずつ事業の規模を拡大していく。

茜と七だけでは限界があり、小規模の卸売りがやっとだったが、配達範囲を広げる為に力をかしてくれた豆腐屋の店主。パウンドケーキの製作量を増やす為にパートで来てくれた主婦。販売の協力をしてくれた有名コーヒーチェーン店の社長。食材の仕入れをさせてもらっていた地元のスーパーウエスト。七の心の支えにもなった西脇健人。

それぞれ皆んな、茜と七の前向きな姿勢を見て協力してくれる。

たくさんの人と出会い、結ばれたご縁は母娘二人の人柄の良さによるものだった。

感想

離婚後に母娘二人で暮らすようになったくらいから、話が上手くいきすぎていたようにも感じましたが、茜と七の前向きな姿と無理をせず身の丈に合わせて美味しいものは美味しい状態で提供する姿勢は、読者も二人を応援したくなるんじゃないでしょうか。

元夫の敏彦は悲しい結末を迎えてしまいますが、その他の人たちは母娘と共にやり甲斐を感じながら生活していく様は、読者として気持ちよく読み進めていく事ができ、紹介文にもあったように温かく描かれた感動作でした。

茜が言った『恥をかく勇気』という言葉は、新しい事に挑戦する時や、困難な状況に追い込まれた時に、目の前に立ちはだかる壁のハードルを下げてくれる魔法の言葉のように感じました。

茜や七のように、新しい事にチャレンジする時は、失敗して恥をかいてもいいからチャレンジする。それとは逆に、敏彦の様にプライドや世間体を気にして恥をかく事を恐れては、すべてを失ってしまう。どんな立場の人にも、『恥をかく勇気』を心に秘めておかなければならない事だと感じました。

最後に、茜が得意とするバナナケーキのレシピが記されていました。それを見ただけで、温かさと美味しさが伝わってきます。お菓子作りが苦手な私でも作れてしまいそうです。

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