こんにちは。結婚して7年、妻だけでなく娘たちにも尻に敷かれてるケンタです。
今回は、作家:辻村深月さんの『傲慢と善良』をご紹介します。傲慢な世の中の生きづらさを表した小説になっています。
内容説明(裏表紙より)
婚約者:坂庭真美が忽然と姿を消した。
その場所を探すため、
西澤架は彼女の過去と向き合う事になる。
彼女はなぜ姿を消したのか。
浮かび上がる現代社会の生きづらさの根源。
圧倒的な支持を集めた恋愛ミステリの
傑作が、遂に文庫化。
主な登場人物
西澤 架(にしざわ かける)
主人公。自営業をしており、ルックスが良く、恋愛経験もそれなりにあるが結婚できずにいた。婚活アプリで真美と出会い、婚約するものの、結婚式前に真美が行方不明になる。行方不明の真美を探すため、真美の隠された過去を探っていく。
坂庭 真美(さかにわ まみ)
架の婚約者。自己主張が少なく、母親の意見に従って生きてきた。恋愛にコンプレックスがあり、婚活がうまくいかない状況で、突如と架の前から姿を消した。
坂庭 洋子(さかにわ ようこ)
真美の母親。娘を溺愛しすぎて、全てにおいて口出しをしてしまう。
美奈子(みなこ)
架の親しい女友達。昔から架と付き合いがあり、恋話の相談や意見を言い合ったりする友達。
こんな人に読んで欲しい
婚活を考えている人、やっている人
理想の人が見つからない人
今の世の中に生きづらさを感じる人
注目ポイント
無意識で相手を点数化している
『いま結婚したい気持ちはなんパーセント?』
婚活アプリで知りあった真美との交際期間が1年半も過ぎ、結婚に向けて動かない架に対して、女友達らからある質問を投げかけられる。
その質問に架は70%と答えるが、それは真美に対する評価点だと女友達は言う。
人は無意識のうちに、相手を評価し、自分に釣り合っているのかどうかを点数によって判断しているのかもしれない。
恋人や家族、職場の人、友人、すべての自分に関わる人たちに対して、点数でランク分けし接しているのかもしれない。
それゆえに、関わる人が多くなればなるほど、生きづらい世の中に、私たちは生きることになるのだと思う。
狭い世界の世間体
真美の母親は、母親自身の自己満足のために、娘を地元の有名大学に進学させ、口利きを使地元の安定した県庁で働かせ、自分が選んだ県内在住の、肩書きのある男性と結婚させようとする。
『真美は自分で何も決めれないから』、『真美の将来のため』と、長年にわたり母親が決めたことに真美を従わさせる。
過保護、娘を溺愛するがゆえに、子離れできない母親のせいで、自分では何も決めれない娘を育てている事に気づけない母親。地元だけの狭い世間体だけを気にして、満足しているだけの母親。
そんな、母親のいる実家を逃げるように出てきた真美は、東京で婚活し架と出会う。
ストーカー
真美が行方不明になる直前、『家にあいつがいるから、部屋に入れない。助けて。』と架に連絡を入れたこともあり、真美の原因不明の失踪はストーカーが原因だと考えた。以前にも、真美はストーカーの存在を話していたが、架は特に気に留めず、話を聞いていなかったことに後悔する。
結婚相談所
行方不明になった真美の真相を知るために、真美の地元である群馬県に向かい、そこで真美が過去に結婚相談所で2人の男性と出会った事を知る。
架は、その2人のどちらかがストーカーになり、真美を連れ去ったのだと考え、2人に合わせて欲しいと婦人に頼む。
感想
本作を読んで感じたのは、登場人物の心理描写がとても丁寧だと感じました。丁寧なあまり、ストーリーの展開がゆっくりで、もう少しスピード感があってほしいなと感じるとこもありましたが、最後まで読んだ結果、それまでの丁寧な描写がこの作品には必要不可欠だったんだなと感じさせられる小説でした。
『傲慢と善良』言葉だけを見れば、対極的なイメージではあるけど、傲慢さから欲をだし、正しい選択を選ぶことができない。善良さから周りの流れに合わせて、自分の考えで物事を決めれず、正しい選択ができない。
結局、人間は傲慢と善良の中で生きていき、選択と答えの出し方がわからず、今の世の中が生きにくいと感じる人も少なくないのだと感じさせられた小説でした。
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