ジウⅠに引き続き、ジウシリーズの2作目となる「ジウⅡ」
前作を超えるスケール感と物語のスピード感に圧倒され、一気読みで楽しませてもらいました。
前作では謎のまま終わった「ジウ」という少年について、2作目となる「ジウⅡ」で少しづつわかってきます。ジウとはどんな少年なのか?共犯者との繋がりは?なぜ事件を起こすのか?
今回ご紹介する「ジウⅡ」は、ジウⅠ・Ⅱ・Ⅲと続く作品の2作目になります。1作目ではジウと言う謎の少年の存在。この2作目では、謎の少年ジウのさらに奥深くにある闇の世界に踏み込んだ内容です。物語も急展開を見せ、目が離せない、私(けんた)のおススメする一冊です。
※ネタバレなしを心がけています。結末や考察は、読者の方ご自身で楽しんで頂きたいと思っておりますので、出来るだけネタバレしないように書いています。ご覧になられた方で、ご期待に沿えない場合があるかもしれませんが、ご理解いただけますと幸いです。
内容説明(裏表紙より)
連続児童誘拐事件の現場で、ついに殉職者を出してしまった警視庁は、
威信にかけて黒幕・ジウを追う。
実行犯の取り調べを続ける東警部補と門倉巡査は、
〈新世界秩序〉という巨大な闇の存在を知り、更なる事件の予兆に戦慄する。
一方、特進を果たした伊崎巡査部長は、特殊急襲部隊から所轄署へ移動。
そこにも不気味な影が、、、
主な登場人物
東 弘樹(あずま ひろき)
捜査一課殺人犯捜査三係主任警部補。美咲とともに「ジウ」を追う。
門倉 美咲(かどくら みさき)
捜査一課第一特犯捜査係二課(SIT)巡査。東とともに連続児童誘拐事件の黒幕「ジウ」を追う。
伊崎 基子(いざき もとこ)
捜査一課第一特犯捜査係二課(SIT)巡査。格闘センスが抜群で、のちに女性初のSAT隊員となる。
ジウ
連続児童誘拐事件の主犯格。極めて高い動察力を持つ少年。
竹内 亮一(たけうち りょういち)
元陸上自衛隊の一空挺団に所属していた空挺レンジャー有資格者。「ジウⅠ」でSAT隊員の雨宮巡査を殺した人物。
木原 毅(きはら たけし)
伊崎基子巡査部長の記事を書いたフリーライター。
宇田川 光浩(うたがわ みつひろ)
新日本大学の教授。
宇田川 舞(うたがわ まい)
宇田川光浩の娘。
宮路 忠雄(みやじ ただお)
死にかけのジウを助けた謎の男。
こんな人に読んでほしい
ジウシリーズ、〈ジウ〉サーガを読んだことがない人
警察小説やミステリー小説が好きな人
スピード感や過激なストーリー展開のある小説が好きな人
注目ポイント
謎の男「宮路 忠雄」と「ジウ」
宮路忠雄はある「集落」で幼い時を過ごしていました。
その集落で長を務めていたのが「宮路」という男。宮路は薬物を売っては大金を持ち帰り、その金が集落では主な収入源となっていました。
忠雄は少しづつ薬物の売り方を学び、集落の外の世界を知ることで、今の生活から抜け出すことを企むようになります。
長い年月が経ち、薬物の販売で富を得た忠雄は歌舞伎町で殴り殺されそうになっている少年と出会います。
その少年は日本語が通じていないのか、しゃべれないのか何も語りません。
その後、無償で住処と食べ物と金を与えていく忠雄はあることに気づきます。
いくら殴ろうが蹴ろうが、ナイフで刺し血を流そうが、その少年は顔色ひとつ変えないのです。
その少年は「痛み」を感じていない。
人間にとって痛みを感じないというのは生きる上で致命的。なぜなら、体から流れる血を見なければ、自分の体が傷を負っていることがわからないから。
その代わり、少年には人並み外れた身体能力を持っていました。初めの頃は忠雄が殴れば倒れ、ナイフで刺せば簡単に刃先が腹に埋もれていなのに、いつの間にかすべてを紙一重で避けられるようになってしまうのです。
少年は異常なまでに、動きを見て察する「動察力」に長けていました。
そして、忠雄は少年を解放するのです。自由になりなさい。と言い別れを告げます。
それを聞いた少年は片言で「じゆう・・・・・・ジウ」と言いました。
それが、宮路忠雄とジウの出会い、そしてジウの誕生とも言えるのです。
新世界秩序
児童誘拐事件の実行犯グループの一人、竹内亮一が「新世界秩序」について語ります。
ある思想のもと集められた人々がジウと共に行動をしている事を知り、東警部補と門倉巡査は捜査を広げていきます。
竹内は取り調べの際に、「新日本大学の宇田川教授を当たれ」と言います。そして竹内は黙秘を続けた。
宇田川光浩教授は、文化と宗教についての講義を主に行い、特にイスラム文化に詳しく、メディアにも出演するほど有名な人物でした。
事前に宇田川光浩の家族構成を調べておき、東と門倉は新日本大学へ向かいます。
宇田川に会い、話をしていくうちに違和感を感じる東と門倉は、家族構成について話を深堀します。
すると、警察の情報では把握されていな事実が発覚するのです。
それは、12歳になる娘・舞がいること。宇田川は娘の事を公に隠していた。
門倉は「竹内が当たれといったのは、このことだったのか」と直感するのです。
なぜ、宇田川光浩は娘のことを隠していたのか。そして、その先に待っている「新世界秩序」とは、どんな闇世界が東と門倉を待ち受けているのだろうか。
「負ける」
突如として伊崎基子の前に現れたフリーライターの木原毅。彼は「ジウが暴力団事務所を襲撃し、拳銃を強奪している」と教える。そして、基子の警察と言う立場を利用して暴力団事務所の動きを知りたい、協力してくれと頼んでくるのです。
もちろん最初は断るのですが、ジウを捕まえて手柄を独り占めできるチャンスだと良いように言われ、結果的に基子は木原に協力をすることに決め、歌舞伎町で一室を借り、張り込みをするようになります。
張り込みをして数日が経ち、ある暴力団事務で騒動が起き、すぐさま向かったそこで伊崎と木原はジウと遭遇するのです。
人混みに紛れようとするジウ、それを追う伊崎。次第に人が少ない路地へ導かれる様にジウを追う。
そして誰一人いない人気のない場所でジウは立ち止まり、伊崎が追いつくのを待っていました。
念願のジウと戦える喜びに満ちた伊崎はすぐに戦闘体制へ。
ジウは片手にナイフを持ち、手をブラブラ下に降ろしている。
伊崎は舐められていた。
ジウが伊崎の間合に入った瞬間に、低姿勢からのタックルをするも、軽々避けられ、基子の頭上からジウの足が振り下ろされてくる。
そして、ジウの持つナイフが振りかざさせる。
顔面を強打され、ナイフが顔や腹を裂き、意識朦朧の中で伊崎の目に飛び込んできたのは、ジウが持っていたナイフ。それがヌンチャクのように持ち手が二つに分かれ金属音が響き渡る。
それを見た瞬間、『負ける』と伊崎は心の中で恐怖を感じるのです。
そして、頭の背後に激痛を感じそのまま意識を失ってしまいます。
そして伊崎が目を覚ますと、見たことのない場所で足を鎖で結ばれて、コンクリートの上に寝かされてたのです。
感想
1作目の『ジウⅠ』に引き続き、とても面白く、スピード感・意外な展開の連続で誉田哲也さんワールド全開の小説でした。
今作のポイントは『宮路忠雄』『新世界秩序』『伊崎基子が拘束される』の3つだと個人的に思います。
ジウの正体を少しづつ見せながら、新たに宮路と新世界秩序という大きな闇を生み出す事により、更なる恐怖を植え付けられ、それでも次々とページを捲ってしまうのは、誉田哲也さんの表眼力の高さから心を掴まれているからだと思います。
次の『ジウⅢ』も期待して読んでいきたいと思いました。
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