小説家の誉田哲也さんと言えば沢山の有名作を世に出され、その中にはジウシリーズがあります。
ジウシリーズは「ジウⅠ」「ジウⅡ」「ジウⅢ」「国境事変」「ハング」「歌舞伎町セブン」「歌舞伎町ダムド」「ノアール 硝子の太陽」「歌舞伎町ゲノム」の全9作品でシリーズ化されています。
そして令和5年6月21日に新作の「ジウX」の発売が決定しています。
今回ご紹介する小説「ジウⅠ」は、ジウシリーズが始まる原点となった小説です。物語のスピード感や緊張感、過激なストーリー展開は「ジウⅠ」からすでに描かれていたのだと驚かされる、私(けんた)のおススメする一冊です。
※ネタバレなしを心がけています。結末や考察は、読者の方ご自身で楽しんで頂きたいと思っておりますので、出来るだけネタバレしないように書いています。ご覧になられた方で、ご期待に沿えない場合があるかもしれませんが、ご理解いただけますと幸いです。
内容説明(裏表紙より)
都内の住宅地で人質籠城事件が発生。
所轄署や捜査一課をはじめ、門倉美咲、伊崎基子両巡査が所属する
警視庁捜査一課特殊犯捜査係も出動した。人質解放への進展がない中、
美咲は差し入れ役として、犯人と人質のもとへ向かうが・・・!?
籠城事件と未解決児童誘拐事件を結ぶ謎の少年、その背後に蠢く巨大な闇とは?
〈ジウ〉サーガ、ここに開幕!!
主な登場人物
東 弘樹(あずま ひろき)
捜査一課殺人犯捜査三係主任警部補。美咲とともに「ジウ」を追う。
門倉 美咲(かどくら みさき)
捜査一課第一特犯捜査係二課(SIT)巡査。東とともに連続児童誘拐事件の黒幕「ジウ」を追う。
伊崎 基子(いざき もとこ)
捜査一課第一特犯捜査係二課(SIT)巡査。格闘センスが抜群で、のちに女性初のSAT隊員となる。
雨宮 崇史(あまみや たかし)
格闘センス抜群のSAT第一小隊隊員。巡査。
ジウ
正体不明。金髪の少年との情報もある。連続児童誘拐事件の主犯格と言われている。
岡村 和紀(おかむら かずのり)
過去に大和会系暴力団、松浪組の構成員だった。児童誘拐事件に関与し、「ジウ」との関りもあることから事情聴取を受ける。
こんな人に読んでほしい
ジウシリーズ、〈ジウ〉サーガを読んだことがない人
警察小説やミステリー小説が好きな人
スピード感や過激なストーリー展開のある小説が好きな人
注目ポイント
読みやすい警察小説
作中には沢山の登場人物と役職が出てきます。「和田捜査一課長」「浜田管理官」「川俣主任警部補」「藤田巡査部長」などなど・・・。素人からすると誰が偉い人で、どんな立ち位置の人なのかは役職を見ただけでは組織の順序がわからないと思います。
しかし、誉田哲也さんの書かれる警察小説は無駄なく分かりやすい説明のおかげで、ちゃんと理解しながら読み進める事ができます。
「ジウⅠ」では、連続して発生する児童誘拐事件を東主任警部補、門倉巡査、伊崎巡査、雨宮巡査を中心に解決へ奮闘する物語が描かれています。
また、かしこまった警察小説なだけではなく、ヒロイン2人の恋模様や警察官としての成長も描かれていて、いろいろな角度から楽しむ事が出来るボリューム満点の一冊です。
連続児童誘拐事件
「ジウⅠ」では連続して児童の誘拐事件が発生します。
最初の児童誘拐事件では、巧妙に警察の手口を攪乱させる事で犯人たちが有利な状況へ事を運び、最終的には卑劣な方法を用いて、我が子の命を心配する親心に漬け込みます。
その後、ある人質を取った立てこもり事件が発生し、捕まった犯人・岡村和紀が児童誘拐事件に関与していることが発覚します。岡村への取り調べにより、児童誘拐事件の主犯格が「ジウ」という少年であることが分かるのです。しかし、肝心な「ジウ」についての詳しい情報を岡村は持っていません。
岡村の取り調べでわかったことは、「ジウ」は金髪の少年で片言の日本語を話し、廃墟を住処に転々としているという事。
正確な年齢、性別、国籍も不明な「ジウ」を探すため、あらゆる廃墟を手当たり次第に当たる中で、次の児童誘拐事件が発生。
それは、たまたま東主任警部補や門倉巡査たちが「ジウ」を探すために調べていた廃墟で起こったのです。
門倉美咲と伊崎基子 二人のヒロイン
「ジウⅠ」では門倉美咲巡査と伊崎基子巡査の二人を中心に物語が進んでいきます。
門倉美咲は、その優しい性格から感じさせる雰囲気で相手の緊張を解し、対話から犯人を説得したり、傷ついた子供の心を開かせたりする等、人柄の良さを武器に相手の心に寄り添う捜査を行います。
その門倉とは考え方も生き方も違う伊崎基子は、格闘センスが抜群で躊躇なく他人を殺すことも出来る女性です。のちに女性初のSAT隊員となります。
お互いに持っていないものを持つことで、自然と意識し合う二人ですが、門倉と伊崎はそれぞれに心惹かれる男性と出逢います。
心惹かれた男性にだけ見せる表情や特別な感情は、警察官としての成長の糧にもなっていてるので、警察小説でありながら、恋愛小説の一面も見る事ができます。
感想
今回、この「ジウⅠ」を読むことにしたのは、のちに発売されるジウシリーズ最新作「ジウX」を読むために前知識を入れておこうと思ったのがきっかけでした。
昔に読んでいるのいて「再読」とも言えるのですが、何年も前の事なので内容を忘れてしまっていたので、新鮮な気持ちで読むことができ楽しめました。
誉田哲也さんの小説は、スピード感と展開の面白さと、読みやすく理解しやすい物語といった印象があるのですが、「ジウⅠ」は10年以上も前にドラマ化されている程に昔の小説なのに、すでに誉田哲也さんの良さが詰まっている小説だったことを再認識させられました。
やはり、「ジウ」という少年の存在が気になりますよね。本作では「ジウ」についてほとんど明かされていません。
謎多きジウが、今後どのような形で姿を現すのか、、、とても気になり続きを早く読みたくなりました。
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